:: 2006/02/22  12:45 ::

「入院患児の治療時における万華鏡を用いたディストラクションツール」

点滴を入れる時などの疼痛を万華鏡で患児の気を逸らせることによって緩和させるためのツールデザインに関する研究である.


2005年度卒業研究・制作,口頭発表内容,[2006年2月3日]

「入院患児の治療時における万華鏡を用いたディストラクションツール

拓殖大学工学部工業デザイン学科 感性デザイン研究室:坂本英明
指導教員:岡崎 章

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研究内容は,入院患児の治療時における万華鏡を用いたディストラクションツールです.

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研究背景
病院に入院している入院患児は,検査や治療のために身体的苦痛や制限を強いられているだけでなく,不安・恐怖など様々な心理的混乱と向き合っています.
処置室の処置台の上でじっと痛みに耐える時間と,注意を逸らしながら耐える時間では,同じ時間の長さでも時間の長さの感じ方や痛みの感じ方が違います.
そこで疼痛を伴う処置の際に,人形を使って模擬体験に近い遊びをしながら処置を行うプリパレーションと,おもちゃを使いながら処置を行い患児の気を逸らせる,ディストラクションなどが試みられています.

しかし,多忙な医師や看護師が十分な時間をかけて,プリパレーションやディストラクションを行うのは容易ではありません.
近年欧米では入院患児に対する簡便な疼痛緩和の方法として万華鏡を使う手法が用いられていますが,いまだディストラクション専用のツールは登場していないのが現状なのです.

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研究の目的と方法
2003年,順天堂大学医学部において実際に万華鏡を用いて入院患児の注意をそらし,疼痛が緩和されるかの研究において,ストレスホルモンである血中コルチゾル値が低いという実験結果が報告されています.
そこで本研究では,万華鏡に焦点をあて様々な色と形で形成された光アートによる注意転換によって,処置室での入院患児を落ち着かせ,医療行為への集中や緊張を軽減して不安や痛みを緩和させ,医療行為のスムーズな進行の支援を目的としたディストラクションツールを制作しました.

次に研究の方法です.
まず,万華鏡やディストラクションの現状について調査します.
次に入院患児の処置室内での行動と処置台を調査し,投影装置や映像の構成を調整し試作品を制作します.
そして実際の医療現場で実験をし,問題点を解決していきます.
対象年齢は2歳から4歳としました.

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本研究は北里大学病院との連携によって成り立っています.
2004年12月から現在まで実際に病院を訪れ,入院患児への実験や専門家からの意見を参考にツールを改良していきました.

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ツールの構造
本研究では,万華鏡を投影タイプ1種類カレイドタイプ3種類の計4種類を制作しました.
投影タイプは従来のタイプと違い万華鏡内で形成される映像を,手の平やドーム型スクリーンに投影して入院患児の注意転換を図ります.

デザインは,薬のカプセルをイメージして 角のない丸みのあるデザインを採用し,処置中は片腕の動作が制限される場合が多い点と幼い子どもにウインクがうまくできない子が多いという点を考慮し制作しました.
そして処置時には看護師が片手で操作できるようアームを取り付けて,点滴台やベッド柵にも取り付けることができるようにしました.

また病院側からの要望で,プレイルームなど部屋の天井に映してみんなで見ることができるよう天井への照射を可能にし,処置室以外のプレイルームや病室でも使用できます.

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次にカレイドタイプです.
カレイドタイプは,ウインクができる入院患児とプレイルームやベッド上での使用を想定し,3種類の万華鏡を制作しました.
制作した万華鏡は映像に,緊張や恐怖感の緩和・鎮静や免疫力増大の効果があるカラーを使用し,看護師がその日の入院患児の状態に合わせてカスタマイズができるようになっています.

そして,すべての万華鏡にラバーコーティングをほどこしています.これは,衛生面の問題でもし万華鏡が汚れた場合もすぐに拭き取れるようにしています.
また,これにはレザーのような質感・触感で高級感を出し,視覚だけでない触覚によるディストラクション効果を図っているのです.

本研究のカレイドタイプには,プレイセラピーの要素を盛り込み,チャイルドライフ・デザインの促進を図っています.

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紫外線ライトを用いた万華鏡は,万華鏡内部を暗闇にし,そのなかでアクリルチップをライトで浮かび上がらせ,万華鏡内部の奥行きや映像を強調し,より幻想的な空間を生み出しています.
使用方法は,まずケースから引き出し,光源装置に好きなチェンバーを取り付け,それを本体に装着して発光ボタンを押して見ることができます.

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次にチップをカスタマイズできる万華鏡です.
これはチェンバーに装入するチップを自由に交換でき,入院患児や看護師がその日の心理状態に合わせてチップをカスタマイズできます.
子どもは遊びにより自分自身を無意識に表現します.これをチップ選択に適用しカラーによる自己治癒効果を図っています.

使用方法は,フタまたはカプセルにチップをいれて取り付け,カプセルの場合は先端をクルクルと回転させて遊びます.
このツールは自らに手を加えさせることでディストラクション効果を強くさせ,プレイセラピーも図ることができます.

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最後にLEDが点灯しチェンバーが交換できる方式は,この前に説明した2つの万華鏡の要素を含めてあります.

LEDには癒し効果のある淡いブルー,ホワイト,グリーンを使用し,本体の先端は半透明になっていて,そこに触れると内部に指の影があらわれ,映像に反映されるようになっています.
これはケースを付けたままでも鑑賞が可能で,ケースから引き出してチェンバーを交換することによって見ることができます.

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以上の4タイプ6種類の試作品を北里大学病院で実験をし,改善すべき点が明らかになりました.

ひとつは,多くの入院患児が通常の使用方法とは異なった新しい遊び方をすることで,万華鏡を覗く穴からビーズを入れて覗いたりしていました.
そして,次に使用方法が理解できると乱暴に扱い始めることです.

最後に子どもは初めから設定してあるものよりも,自分で設定できる方が集中の度合いが高い傾向にあるということです.

最初のふたつの問題は,万華鏡本体の強化とチェンバー交換のシステムを変更することによって改善することができました.
最後の問題は,万華鏡を初めから作り上げて使用させるのではなく,最後の仕上げ(チップを入れること)をさせることにより,集中の度合いとオリジナリティーの向上を図ることができました.

----------P11
最後に考察です.
本研究は,チャイルドライフ・デザインの概念に基づき,万華鏡によるディストラクションツールを制作しました.

本研究により,入院患児が自分でカスタマイズできるツールの方が,ディストラクションにはより効果的であり,他にもツールが治療中でベッド上から身動きのとれない入院患児にも有効な玩具になることがわかりました.

今後の展開としては,このツールは完成後北里大学病院小児病棟へ提供予定なので,今後この研究がさらに発展し,入院患児への良い助けとなることを期待します.

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