:: 2006/02/28  23:41 ::

「入院患児のストレス・コーピングのためのツール」

入院患児に襲い来るいろいろなストレスのうち,点滴や採血などチューブなどによるストレスに焦点を当て,遊びを取り入れ患児自身で対処できる支援ツールを開発するための研究である.


2005年度卒業研究・制作,口頭発表内容,[2006年2月3日]

「入院患児のストレス・コーピングのためのツール」

拓殖大学工学部工業デザイン学科 感性デザイン研究室:小沢 満
指導教員:岡崎 章

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----------P1
本研究は,ストレスコーピングのための研究です.
コーピングとは,対処することを意味しています.

----------P2
研究背景
病気は,子どもに対して心理的影響を与えるものです.

また,子どもの場合はそれが成長・発達の段階で生じるため,その影響は複雑です.病気であることとそれによる入院は,子どもにとって典型的なストレス状態であるといえます.とくに,幼児にとっては入院により母子分離を強いられることでストレスは増強し,様々な問題行動を生み出すことがあります.

このような問題行動を防止,または最小限にするためには,入院によって生じるさまざまなストレスに対する適切な対処行動を提供することが必要になります.

----------P3
ストレス・マネージメントについて簡単に説明します.

まずストレッサーとは,ストレスの要因のことです.ストレスに対してストレッサーに気づき認知することが重要になります.そしてストレッサーの存在に気づきそれらの対処行動について考え,人によって様々な対処法があることを知る必要があります.

ストレス反応への気づきとは,人の行動に出るストレス反応を知ることで自身のストレスに気づき対処が必要である事を学ばせます.
そして対処によるストレス反応のコントロールへとつなげます.

----------P4
研究の目的
患児にとって,入院は特別なことであっても,遊びは日常生活において欠かすことができず,遊びを我慢することで成長・発達に影響を及ぼす可能性があります.看護師が,時間に余裕がある限り一緒に遊んだり,他児との交流の場を提供していますが,患児の「遊びたい」という欲求を十分に満たせないことが多く,周囲には短期入院患児が多いため入院生活のなかでは遊び仲間ができにくく,たとえできたとしても仲間関係を維持することが難しいという問題があります.

入院患児を取り巻く環境は,入院と同時に非常に特殊なものへと変わります.身体には,点滴や呼吸器など多様な器具が付属してくる場合が多く患児はこれらの医療器具に多くのストレスを感じて,引っ張ったり外そうとする行動にでる場合が多くなり,長時間使用し続ける事で大変なストレスを生んでいます.そして,それらの器具を取りたい(抜きたい)という欲求にかわります.

専門家からの要望もあり,抜くという行動を代替的に行うツールを提案しました.

----------P5
「抜く」という行為を体感させることによって,ストレスのコーピングを他者からの支援ではなく,患児自身で対処できるツールの制作を進めた.これによる代替によって,医療器具から受けるストレスを緩和することができます.

抜くという動作に変化をつけ飽きさせず,快感をもたらすような音や感触を与えるようにする.このツールは,ベット上での安静を余儀なくされている七歳未満の入院患児としています.

このツールには様々な対処に対応するため四つの要素をとりいれています.

----------P6
これは,点滴などのチューブをイメージしており,ゴムチューブを思い切り引っ張ることができる.「点滴などのチューブをいじりたい」とゆう衝動を緩和することを目的としています.

----------P7
抜くときのイメージを強くあたえるため「スポン」と音をたて,気持ちよく抜けた時のイメージを伝えています.ただし,これは一方方向のみで,逆方向で引っ張ってセットする形となっている.

----------P8
「カチカチ}と音をたて,引っ張る手にも感触を伝えている.機械的なイメージで,普段感じ得ない感触を伝えています.

----------P9
チューブを液体が流れるイメージを伝えている.引くと黄色いチューブが後を追ってのびてくる仕組みになっています.当初は赤いチューブでしたが,リアルな血液を連想したため,黄色に変更しました .

----------P10
このツールを北里大学病院にて実際に使用してもらい検証しました.
使用してもらったのは,男子児童四名に女子児童一名で,男子児童の一人は一歳半の幼児でした.
最初は興味を示し,自由に遊んでいました.しかし,一歳半の幼児には最初に遊び方を教える必要がありました.
女子児童が幼児と一緒に遊び,幼児がそれを見てまねをしながら遊んでいました.

----------P11
男子児童三人は,上図の二番目と四番目のツールに興味を示していました.
しかし,ツールの使用は引く力が強く必要になり,片手での使用が難しい事と,ツールの一部が点滴に絡みやすかったという問題がありました.

----------P12
以上のことから次の改善点があがりました.
1.点滴が入っている患児のチューブと絡まないように自動 的に収縮が必須である.
2.片手での操作が可能になるようにベッド柵に固定して斜め 引きで触感を得られるようにする.
3. 今回製作したツールは一つにまとめていたが,ツール一つ に対して一つの機能 をもたせる.
これは,一人一人の状況や好みに応じて合わせるため単決の機能に分けています.

----------P13
本研究では,ストレスコーピングについて研究してきたが,ストレスの要因が多岐にわたるように,その対処方法も非常に多様になります.

今回は,「抜きたい衝動」について限定したが,患児によって医療器具の処置や種類が異なるため,完全とはいえません.今後の展開としては,患者の処置方法とストレスの関係性について研究して,改善していく必要があると考えられます.

改善後のツールは製作中であり,完成の後,専用をケースにまとめ北里大学病院小児病棟に提供する予定です.

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