:: 2006/08/15  04:05 ::

「パーソナルコンピュータを用いた術前プレパレーションツールの開発 -絵本との比較を通して-」

近年,様々なプレパレーション技法やツールが紹介されているが,言語・認知の発達が未熟である幼児は検査や手術を十分に理解させ納得させることは難しく,不安が容易に増強する.

今回,コンピューターグラフィックス(以下,CG)で構成されたパーソナルコンピューターを用いた幼児後期を対象としたプレパレーションツール(以下,PCツールとする)の開発を行う機会を得た.

従来使用されているツールである絵本との比較を通し,PCツールの有効性を検討すべく本研究を行うこととした.


日本小児看護学会 第16回学術集会[2006年7月29日(土)・30日(日) ,パシフィコ横浜]

「パーソナルコンピュータを用いた術前プレパレーションツールの開発 -絵本との比較を通して-」

内藤茂幸(北里大学病院),油谷和子(北里大学病院), 吉川佳孝(自治医科大学付属病院),岡崎 章,(拓殖大学)

PowerPointの内容は,画面をクリックするごとに次のページを見ることができます. PowerPoint右下に表示されるページに対応した発表内容が下記文章となります.はじめから見直したい場合は,右クリックで巻き戻し,再度右クリックで再生を選んで下さい.

はじめに

まずはじめに用語の定義ですが,ここのところプリパレーションの概念・定義が統一化されており,今まで使用してきた狭義でのプリパレーションを含む一連の行為全体のことを指してプリパレーションと言うようになってきました.

しかし,本稿におけるプリパレーションは狭義のプリパレーションである「医療行為などの説明を遊びを交えて行うこと」としています.

さらに,名称もプリパレーションからプレパレーションへと今後統一されていくことが予想されますが,ここでは抄録同様にプリパレーションと表現していきたいと思います.

すなわち,ここで言うプリパレーションツールとは,子どもに対してこれから行う医療行為について説明して,理解を促すためのツールということです.

理解を促す際には一般的に何らかのツールを使用するが,どのようなツールが最も適切であるかということは未だ議論の余地があります.

今回,PCツールの開発を行う機会を得て,絵本との比較を行いPCツールの有効性を検討したのでここに報告いたします.

PCツールの効果

PCツールの特徴の紹介をしていきます.
新しいタイプのツールであります.インタラクティブな操作によって,説明内容を子どもが理解できるように変換する「翻訳機」となります.

術前,処置,検査などの各場面に適応できます.3次元コンピューターグラフィックスで構成されているため,比較的容易に各場面を構成でき,大人を含めた他の年齢層にも活用が可能です.

説明内容が予め組み込まれているため,説明者の経験によらず一定の高レベルな説明が可能となります.

キャラクターなどすべてオリジナルで作製されています.子どもが好むと思われる質感を選択し,アニメーションを使用しています.ちなみにキャラクターは病棟看護師に似せてより安心感をもてるようにしています.

PCツールの効果

処置場面や移動時の実写ムービーを見ることができます.今回の研究では使用していませんが,イメージ獲得の援助や,幅広い年齢層への適応のメリットが考えられます.

患児参加型の自主的・能動的な反応を促す説明が可能です.タッチパネルによる操作と機能を盛り込んでいます.
携帯・移動が可能です.ノート型PCを用いており説明場所を選びません.

将来的にはネットを介して閲覧・ダウンロードが可能となる予定です.安全な使用についての配慮・検討の後,他の多くの施設で自由に使用ができ,将来的には入院前に自分の受ける検査・処置内容を確認できるようにしていきたと思っています.

そして,音による情報も与えることが可能です.
それらの要素で構成されたツールをここではPCツールと呼んでいます.これまでには無かった,新しいタイプのツールであることが,分かっていただけると思います.

実際のツールをご紹介したかったのですが,動画を含むためスライドには表現できませんでした.代わりにノートパソコンを設置する場所を設け,皆様に見ていただけるように配慮していただきましたので,興味のある方は発表終了後是非ご覧になって,触ってみてください.

研究方法

次に,研究方法です.
対象者は初回の定時手術目的で入院された4歳2名,6歳2名の計4名です.

方法は,絵本群,PCツール群を4歳,6歳各1名ずつに分け,動作解析システムを稼働しながら母親同席のもとプリパレーションを実施しました.絵本・PCツールともキャラクター・ストーリーは同じ内容になっています.

ここにある動作解析システムとは,対象者をビデオカメラで撮影し,そこから動きの程度,速さ,加速度などを数値化することによって,対象者の動きを客観的に把握することができるシステムです.

次に,説明の内容ですが,手術前日は手術室看護訪問・夕食・母子分離・バイタルサイン測定の場面.手術当日は,点滴留置・前投薬内服・手術室へのストレッチャーでの移動・母子分離・手術室入室・術後面会・帰室後ベッドで安静の場面です.今回の研究では術前までの場面を対象としています.

研究方法

評価方法です.
絵カード,これは絵本・PC両方に登場する同じ場面を示したカードですが,を提示し患児の回答から理解度をチェックします.

説明実施直後,①前日母子分離,②手術室へ移動の2つの場面を示し患児に何の場面を示しているのかを問います.その回答を母親が聞いて母親が児の理解度をスケールⅠ~Ⅵで評価します.[Ⅰ:全く理解できていない]から[Ⅳ:理解できている]の4段階です.

母親から見た興味の程度をビジュアル・アナログ・スケールで評価します.児が,最も興味を示した状態[10]とし,全く興味を示さなかった状態[0]として評価していただきました.

そして,動作解析システムと児の反応による分析です.動作解析システムの映像,これは,各ツールを用いた説明場面を撮影したものですが,とその後の手術までの各場面における実際の対象者の反応を詳細に記載し,内容を質的に分析しました.

 手術までの各場面とは次に示す,「結果」にもある通り,母子分離時・バイタルサイン測定時・ストレッチャーでの移動時・手術室入室時となります.
不安の表出し易い場面を選択しましたが,点滴挿入や手術前投薬は実施されていない患児がいたため今回は含まれておりません.
倫理的配慮は参照してください.

結果

結果です.結果に関しては考察の冒頭でまとめてありますので,そちらで説明していきます.

考察

まず結果のまとめです.

患児の反応の違いとして以下のような点が観察されました.

  1. PCツールの方が,絵本より画面を触る・「早くやってみたい」などの発言や,質問をする等の自発的行動が見られました.
  2. [移動]時では,手を広げて自発的にのりこもうとする様子が見られるなど,PCツール群の方がより理解を示している言動が聞かれました.ここは実際のPCツールでは児がキャラクターを操作してストレッチャーに乗せるということをしています.
  3. PCツールでは,母親の評価Ⅳが得られ,ビジュアル・アナログ・スケール値も高得点でありました.
  4. 母子分離時・手術室入室時には,特記できる差は認められませんでした.

上記のような結果が得られた要因として,PCツールは情報量が多く視覚的に捉えやすいことが考えられます.

  • 画面に触れてもらうことで自主的に操作する場面が多く,より「能動的な理解」に繋がると考えられます.
  • 幼児期後期では,自分でやった・できたという達成感が得られるような関わりは重要であり,エリクソンの発達課題を踏まえても自主性の尊重は大切な援助であると思われます.
  • 「やってみたい」という発言,身を乗り出す行動は,集中力の持続とより良い理解を促すと考えられます.

また,今回の研究では差の有無を議論できるまでには至っていませんが,特筆すべき絵本との差がない場面に関して,以下のような点をあげました.

  1. 絵本でも一定の理解を促すことは可能である.
  2. 絵本独自の語りかけの効果がある.
  3. 症例数が少ないことでの優位差の抽出の限界.
  4. 個人特性,環境因子などの不確定要素の影響が考えられる.

PCツール有効性の概念図

PCツール有効性の概念図です.

患児に手術や検査の説明をする際に,PCツールを使用すると・・・PCツールには,親しみ易いキャラクターであったり,患児に実際に操作してもらう場面であったり,実写を写すことも可能であったり,説明文が同一画面に表示してあって説明が容易であったり,視点の切り替えが出来たりする機能があります.

それらを駆使することによって,興味を引き,理解度を高め,不安の軽減に至ると考えています.しかし,そこに個人特性や環境因子が関与することは重要な事実です.

結論

PCツールは,絵本に比べ幼児後期の子どもにとって手術や処置の説明を行う際,より有効的なツールであることが示唆されました.

 今後は,さらなる正確な評価方法,活用方法の検討が必要であります.

今回,縁あって他専門分野の方の全面的な協力を得て,我々の力では到底成し得ないこういったツールを製作することができました.試作品が出来上がる度にスタッフ一同驚いておりました.

先ほども紹介いたしましたが,興味のある方は是非実物をご覧になって下さい.そして,感想等もお伝えいただければ今後の参考にしていきたいと思っております.

なお,本研究はH17年度文部科学省科研費基盤研究(B)「入院患児に対するプリパレーション・システムの構築とその効果」の研究の一部であります.

 詳細はをご覧になりたい方は記載してあるURLを参照していただければ幸いです.
ご静聴ありがとうございました.

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