:: 2006/09/28  04:41 ::

「コンピューターグラフィックス・アニメーションで構成された自己決定の要素を持つ術前プレパレーションツール開発とその効果   ~幼児後期における絵本との比較を通して~」

手術を受ける児に対して,プレパレーションの実施が有効的であることは既に様々な研究で立証されている.しかし,その効果は使用するツール(媒介)によって影響を受ける.今回我々は,コンピューターグラフィックス(以下,CG)アニメーションで構成された自己決定の要素を持つ,幼児後期の術前プレパレーションツール(以下,PCツール)を作製した.代表的なツールである絵本との比較を通して有効性の検討を行ったので報告する.


第37回日本看護学会(小児看護),口演内容,[2006年9月21日~22日,広島国際会議場]

「コンピューターグラフィックス・アニメーションで構成された自己決定の要素を持つ術前プレパレーションツール開発とその効果   ~幼児後期における絵本との比較を通して~」

内藤茂幸*1,油谷和子*1,別府千恵*1,吉川佳孝*2,石井真*3,岡崎章*4(*1北里大学病院 *2自治医科大学付属病院 *3北里大学看護学部 *4拓殖大学工学部工業デザイン学科感性デザイン研究室)

PowerPointの内容は,画面をクリックするごとに次のページを見ることができます. PowerPoint右下に表示されるページに対応した発表内容が下記文章となります.はじめから見直したい場合は,右クリックで巻き戻し,再度右クリックで再生を選んで下さい.

はじめに

まずはじめに用語の定義ですが,ここのところプレパレーションの概念・定義が統一化されており,今まで使用してきた狭義でのプレパレーションを含む一連の行為全体のことを指してプレパレーションと言うようになってきました.

しかし,本稿におけるプレパレーションは狭義のプレパレーションである「医療行為などの説明を遊びを交えて行うこと」としています.
すなわち,ここで言うプレパレーションツールとは,子どもに対してこれから行う医療行為について説明して,理解を促すためのツールということです.

子どもに手術等の説明をして理解を促す際には通常何らかのツールを使用しますが,どのようなツールが最も適切であるかということは未だ議論の余地があります.
今回,我々はCGアニメーションで構成された自己決定の要素をもつ術前プレパレーションツール(以下,PCツール)の開発を行う機会を得ました.そして,自らの先行研究において,PCツールは従来使用されてきた絵本よりもプレパレーションツールとしての有効性が高いという示唆を得ました.

その結果を踏まえ,今回は別の評価方法を用いPCツールと絵本との比較を行い,PCツールの有効性を再検討したのでここに報告いたします.

PCツールの特徴

PCツールの特徴の紹介をしていきます.
キャラクターはオリジナルで作製されています.子どもが好むと思われる質感を選択し,アニメーション部分を含みます.3次元コンピューターグラフィックスで構成されているため,比較的容易に各場面を構成でき,術前,処置,検査などの各場面にも適応可能です.

ちなみにキャラクターは病棟看護師に似せてより安心感をもてるようにしています.
数箇所に児が自ら操作し,自己決定を促す場面があります.それにより患児参加型の自主的・能動的な反応を得られる説明が可能です,タッチパネルによる操作と機能を盛り込んでいます.
ノート型PCを用いており携帯・移動が可能で説明場所を選びません.

ストーリーや説明内容,登場キャラクターは全て絵本と同様のもので作製しています.
また,説明内容が予め組み込まれているため,説明者の経験によらず一定の高レベルな説明が可能となります.

 今回の研究では使用していませんが,処置場面や移動時の実写ムービーを見ることができます.イメージ獲得の援助や,幅広い年齢層への適応のメリットが考えられます,そして,音による情報も与えることが可能です.

PCツールはこれまでには無かった新しいタイプのツールであると思います.インタラクティブな操作によって,説明内容を子どもが理解できるように変換する「翻訳機」となります.
実際のツールをご紹介いたします.
また,本日は実際のノートパソコンを持ってきておりますので,興味のある方は発表終了後是非ご覧になって,触ってみてください.

研究方法

研究期間は参照して下さい.対象者はA病院に定時手術目的で入院された3~5歳の児,計14名です.

方法です.
対象者をPCツール群,絵本群にわけ母親同席のもと説明を実施しました.
説明の内容は,手術前後のスケジュールを,児がイメージできるように意識して以下の場面を選択しました,各場面に関しては画面を参照してください.
今回の研究では術前までの場面を対象としています.

評価方法です.
説明実施直後,絵本・PC両方に登場する同じ場面を示した絵カード2枚を児に示し,児の回答の様子から理解度をチェックします.
2つの絵カードとは①前投薬内服時②手術室へ移動時の2つの場面です.
理解度はスケールⅠ~Ⅵで評価します,[Ⅰ:全く理解できていない]から[Ⅳ:理解できている]の4段階です.

次に,母親から見た児の各ツールの対する興味の程度をビジュアル・アナログ・スケールで評価します.児が,最も興味を示した状態[10]とし,全く興味を示さなかった状態[0]として評価していただきました.

VASによる興味の評価に加えて,動作解析システムによる興味の評価を行いました,
ここにある動作解析システムとは,対象者をビデオカメラで撮影し,そこから動きの程度,速さ,加速度などを観察することによって,対象者の動きを客観的に把握することができるシステムです

次に,各ツールを用いた説明を実施後,手術までに児が経験する不安が増すと思われる3場面において,児の不安を点数化しました.そして,アメリカで作成された観察型不安スケールを元に,新たなスケールを作成しました. 点数化された不安は23~100の間で表示され,低値の方がより不安が少ないことを意味します.

手術までの3各場面とは,手術前投薬内服時・手術当日の母子分離時・ストレッチャーでの手術室までの移動時となります.手術前投薬内服時・ストレッチャーでの手術室までの移動時は理解度の測定で用いた場面と同じ場面です.

研究方法

絵本群・PCツール群で数値化された「興味」・「理解度」・「不安」に対し記述統計処理を行いました.

結果

対象者に関しては画面をご参照下さい.

各値の平均値に注目しグラフにしてみました.
理解度の平均値です.
理解1,2ともにPCツールの方がより高値でありました.

VASによる母親の評価ではご覧のようにPCツールの方が,高得点を示しました.
また,動作解析システムの映像では,頭部と体幹を正面に向けた時,顔をツールに近づける動作等が絵本よりPCツールの方に多く見られました.

それらの動きがグラフで表現されることにより,より客観的に捕らえることができました.これは,よりPCツールの方が興味を得ていると考えることが出来ますが,具体的な数値としての比較までには至らず,今回は参考程度としてとらえております.

結果

「不安1~3」においてはPCツールの方が絵本と比べ低値.
PCツールの方が絵本と比べ低値を示していることから,より不安を軽減できたことが示唆された.

考察

結果を次のように考察しました.
PCツールは,アニメーションを含むために絵本より情報量が多い.
PCツールの方が,実際の場面を視覚的に捉え易く,幼児後期の対象者に具体的な情報を提供することができたと考えられます.

PCツールは,児に画面を触れて操作してもらうことで自己決定を行い,読み聞かせが主になる絵本に比べ,より「能動的な理解」につながったと考えられます.
PCツールの画面を自ら操作し,キャラクターを動かすことは自己効力感へ繋がることが期待できます.

考察

PCツールに対する高い興味は,年齢的にも好まれやすいアニメーションの使用や,自分自身で操作していくゲーム的要素などによって得られたと考えられる.

実施時に見られた「面白い」「やってみたい」との児の発言やPCツールを集中して操作する姿などからも実感することができた.

興味を引くことは子どもに説明を実施していくためには重要な要素であると思います,高い興味を得ることによってより良い理解がうまれると考えられます.

高い興味,よりよい理解を得ることが結果的に不安軽減につながっていったと考えられます.

PCツールの有効性の概念図

PCツール有効性を表す概念図です.
親しみ易い動きのあるキャラクター,患児に実際に操作してもらう場面,説明文の同一画面表示,視点の切り替えが出来たりする機能があります.

それらを駆使することによって,興味を引き,理解度を高め,不安の軽減が得られると考えています,しかし,そこに個人特性や環境因子が関与することも重要な事実です.

 

まとめ

結論です.
PCツールは,絵本に比べ幼児後期の子どもにとって手術や処置の説明を行う際,より有効的なツールであると言うことの検証を深めることが出来ました.

しかし,我々は決してPCツールが万能であるとは考えていません.今回の比較対象として使用した絵本に関しても,読み聞かせの効果や,生活に密着していて親しみ易いなど,それぞれに優れている点があると思います.

最終的には対象者の個別性を踏まえ,色々なツールを組み合わせてカスタマイズすることが必要であると考えます,

今回,縁あって他専門分野の方の全面的な協力を得て,我々の力では到底成し得ないこういったツールを製作することができました.

本日実物をお持ちしたので興味のある方は是非ご覧になっていただければ幸いです,そして,感想等もお伝えいただければ今後の参考にしていきたいと思っております.

なお,本研究はH17年度文部科学省科研費基盤研究(B)「入院患児に対するプリパレーション・システムの構築とその効果」の研究の一部であります.詳細をご覧になりたい方は抄録に記載してあるURLを参照してください.

ご静聴ありがとうございました.

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