:: 2008/08/01  11:45 ::

「保護者を対象とした小児腎生検用説明支援ツール「Yutori」の開発」

“Yutori”は,患児の保護者を対象とした説明用ツールである.従ってキャラクターなどは一切出てこない.
患児にプレパレーションを実施するためのツールとは全く別の視点で,保護者に腎生検前後の内容や安静の重要性を理解してもらうことが結局患児への安静を誘うことができるという考え方である.
インタフェースの評価はアイマークカメラを用いることで検証を行いその有効性を示した.

"Yutori"の無料ダウンロード提供ページ

「保護者を対象とした小児腎生検用説明支援ツール「Yutori」の開発」

内藤茂幸・吉川佳孝・油谷和子・岡崎 章

保護者を対象とした小児腎生検用説明支援ツール「Yutori」の開発の発表をさせていただきます。

腎生検は侵襲や制限を伴う検査であり、患児への説明はもちろん保護者に対して十分な説明を行うことが重要な課題であります。そこで、より効果的な説明が可能なツール開発を目的に拓殖大学感性デザイン研究室、以下KDLとしますが、の協力を得ました。そして、開発の過程においてアイマークカメラ、以下ECとしますが、を用いた斬新な検討を実施しました。これらを経て今回、パーソナルコンピューター上で操作が可能なソフト「Yutori」を作製したため報告させていただきます。

KDL側と現状の確認

まずはじめに、KDL側と現状の確認をしました。現在A病院では、腎生検のスケジュールが経時的に記載されているモノクロの紙媒体であるクリニカルパス、以下パスとしますが、を使用していること。そして、情報の重要さ、関連性などの補足説明の内容は担当看護師に委ねられており、そのため説明内容に差異が認められていることを確認しました。ここで言う、担当看護師とはその日にその部屋を担当する看護師であり、当然、1年目からベテラン看護師までさまざまです。以上を踏まえ、情報を効率よく提示するツールの必要性をKDL側と確認しました。

開発の実際ですが、まずKDL側による「Yutori」の基本的構成の検討を行いました。その際にISO13407やニールセンの定義から必要な要素を抽出しています。ISO13407やニールセンの定義と言う言葉は聞き慣れないと思いますが、今回のようなインターフェイスを作製する際に必要な、基本的要素を規定しているものです。それらを経て試作版Yutoriが完成しました。

分析

試作版Yutoriを用いて一回目の分析を行いました。看護師5名を被験者としてECを用いました。ECを用いる利点は、操作時の視点の移動・停留時間・累積回数等を定量化し客観的に判断できる点にあります。(左側の写真を示して)この写真が実際のECを用いた分析の様子です。一見、肘をついて態度が悪いように見えますが、これは頭部を動かないように固定するためです。頭についている帽子にカメラがついており、視点を追うことができます。(右側の図を示し)これが、実際の視点の移動の様子です。

分析の結果としては、画面のスクロール部に影響され視点の偏りがあり、操作の理解に時間を要したということと、ボタンの区別や表示内容が理解しにくいという意見を認めました。そして、看護師の意見をもとに改めて、説明項目の重要度や、情報間の関連度を整理し、一覧化するとともに情報価値の可視化を行いました。それらを踏まえ「Yutori」を改良しました。

改良したYutoriに対しニ回目の分析を実施しました。一回目と同様に対象看護師5名です。ECを用いた分析結果としては、関連情報の操作に戸惑う様子はなかったということと、改良前より視点の偏りを認めず操作性の向上を確認しました。これは後ほど示す図1、2を参照して下さい。そして、さらにスクロール操作部の位置を変更しました。また、情報価値の可視化の表示が分かりにくいとの意見もあり表示方法を変更しました。再度改良を行い「Yutori」が完成しました。

これが視点の停留点回数分析図です。左側の図1が改良前です。グラフの分布の広がりで視点の移動の様子が分かり、グラフの高さによって視点が停留した頻度が分かります。図1に比べ図2の方がグラフがまんべんなく広がっているのが分かります。つまり、視点の偏りが少ないことを示しています。

Yutori

では、実際のYutoriをご紹介します(実際に画面を操作しつつ、P10に示してあるような画面構成の説明をしながら、スクロールの様子や画面展開の様子を示した)。

改めてYutoriの特徴を整理します。

(①を示して)日と時間の流れが混同しないように縦、横と分けて配置しています。

(②を示して)ここに、カードを並べたようなスタイルで説明項目が時系列に表示されます。カーソルを朝~昼~夕と動かすことにより、先ほどのように画面がスクロールし、新たな説明項目が出現していきます。

(③を示し)説明項目の情報価値はカードの「枠」の太さで表現しました。重要な情報ほど、枠が太く表示されます。

(④を示し)そして、看護師の意見を踏まえ、見落としがちな情報やよくある質問内容を網羅し「補足説明、Q&A」としてここに提示をしました。

(⑤⑥を示し)ここには、関連情報の表示ボタンとメール送信ボタンを配置しました。関連情報ボタンを押すことによって画面下の関連情報エリアに情報が表示されます。メール送信ボタンに関しては、今後、必要な情報をメールで送信できることを視野に入れて作製しました。メインの機能とサブの機能を差別化するためにボタンの雰囲気を変更してあります。

(⑦を示して)選択した情報と関連性のある情報を「関連情報エリア」に表示しました。視線の流れを考慮した結果、最下層部に配置しています。

評価

Yutoriの評価です。看護師に対しアンケートを実施しました。「Yutori」を使用した際におけるメリット、デメリットの自由記載としています。対象は計15名で、看護師の経験年数は2~10年目であり、平均4年でした。倫理的配慮に関してはご参照ください。

メリットに関しては、説明の重要度が視覚的に確認できることや、各情報間の関連性が把握しやすいことが挙がりました。そして、色彩が目を引くということや、動きがある構成のため興味をひくと言う意見も認められました。

一方、デメリットに関しては、操作に慣れるまである程度の時間が必要との意見や、やはり、使用するためにはパーソナルコンピューターが必要であり、常に手元に置けないという意見、そして、入院から退院までの全体像が把握しにくいという意見がありました。

考察

考察です。アンケートの結果、Yutoriは従来のパスに比べて情報の重要度が視覚的に入りやすく、各説明項目の関連性も把握しやすいことが示唆されました。これにより、看護師の経験年数の差によらず効率的な説明が可能となり、保護者も関連性を自ら把握しやすいと考えられます。カーソルを動かす、選択するなどの操作によって説明が展開されていく様子や、パステルカラーを採用し色調も豊かであることも理解を促す一因になっていると考えます。Yutoriのように説明項目を選択すると、基本的な説明内容はもちろん、補足説明やQ&A、そして関連情報が示されるという画面展開は、紙媒体の従来のパスで表現することは難しい内容であると考えます。

そして、開発過程においてECによる分析を用いたことにより、視点の偏りを抑える工夫を行なうことができたことにより、操作性が向上し、使用者に上記メリットをより獲得しやすい状況をもたらしたと言えます。

一方、デメリットでは、内容に関しての指摘は「全体像が把握しにくい」と言うもののみでありました。Yutoriの現在の画面構成では課題が残るところであります。他の意見は「操作の慣れ」や「利用環境」に関することであり、「Yutori」が使用できる環境やハード面の整備の必要性を伺わせました。
以上のことから、「Yutori」は開発の目的としていた必要な情報をより効率よく得ることができるツールであるという示唆を得ることができました。今回は看護師側のみの評価であったため、今後はより信頼性のある評価方法の検討をしていく必要があると考えています。

Yutoriはそこに記載してあるURLのサイトで無料提供予定です。URLは抄録にも記載してありますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい。ご静聴ありがとうございました。

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