「動体検知を用いたストレスコーピング・ツール」
ベッドの中かで多くの時間を過ごさなければならない場合のストレスは,大人でも多くのストレスを抱える.そこで 点滴チューブに絡むことなく,また身体動作の制限に左右されることなく利用できるストレスコーピング・ツールを開発した.
Webカメラで映し出される今いる自分の映像と同時に画面に表示されるアイテムを手で触れることで音が出たり動きで反応してくれるツールである.
手で触れるのは画面ではなく,あくまで映像上であるからWebカメラを近づければ指で操作できるし,離せばプレイルームなどで全身を使って操作できる.
本ツールは,第55回日本デザイン学会春季研究発表大会においてグッドプレゼンテーション賞を受賞した.
なお,その後,北里大学病院小児病棟看護師有志&新潟大学医歯学総合病院小児病棟看護師有志の方々により実際にご利用頂いたご意見から有効性が確認できましたので無料ダウンロード提供致します.
「動体検知を用いたストレスコーピング・ツール」
拓殖大学工学部工業デザイン学科 感性デザイン研究室:瀬賀誠一
指導教員:岡崎 章
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動体検知を用いたストレスコーピング・ツールについてです.
ストレスコーピングとは
ストレスを感じると人はその代償を求めます.
ストレスコーピングとは代償行動のことでです. ストレス解消法と言い換えても良いでしょう.
日常においてストレスを完全になくすことは非常に難しく,ストレスを回避するための代償を見つけることが望ましいと言われています.
入院している子どもの場合,どのようなストレスを抱えているのでしょうか.
大別すると「いつもと違う生活」「親と離される」「痛みを伴う治療」がありいます.
子どもの受けるストレスは想像に難しくありません.
代償行動としての遊び
子どもは遊びの中でストレスを回避することができます.
遊ぶことで代償行動が取れるのです.
しかし,病院内に具体的なツールがほぼ存在しないのが現実です.
今回の研究の核は「代償行動としての遊び」を提供することにあります.
ツールの要求
当感性デザイン研究室では,実際に現場で使えるツールを開発することに重きをおいています.
そのため,絵に描いたモチでは通用しません.
病院側が継続的にストレスコーピング・ツールとして使っていけるものを提供する必要があるわけです.
では,具体的にどのようなツールなら継続的に使用できるのでしょうか.
まず,「患児がハンズフリーで扱えること」点滴などの医療器具に接触しないために,ハンズフリーで扱える必要があります.
つぎに「身体動作の制限に対応」全身を動かすことのできる患児から,手だけ動かせる患児など,病院にはさまざまな患児がいますが,いずれにも対応できるツールであることが必要です.
最後に「設置が容易」であることです. 先の2つがいかに優れていても設置が困難であっては使ってすらもらえません.
どこにでも持ち運びでき,すぐに患児に使ってもらえるようなツールにする必要なのです.
そこで,本研究ではこのすべてをクリアした「webカメラを用いた動体検知」を提案します.
ツールの特徴
(実際にツールを稼働させながら)
身体動作方向を
表示内容によって身体を動かす方向を限定意識させることができます.
身体後方移動により身体動作を拡張できます.
つまり,Webカメラに近づけば指だの動かすことができるし,数メートル離れれば手を大きく振ったり足を蹴るなどする動作で動かすこともできます.
ベッドの中だけでもプレイルームでもこのツール一つで身体動作を拡張して遊べるというわけです.
ですからリハビリの導入にも利用できます.
音や動きで反応してくれるツールというだけでなく,自分自身が常に映っているということが更に導入効果を高めてくれるはずです.
実験と検討会
本ツールを入院中の9歳男の子のドラえもん好きに使ってもらいました.
彼は左腕に点滴をしていたために,右手のみの操作ではあったが,腕を大きく動かして楽しんでいました.
PCのモニタに自分の姿が映るだけでもかなりの没入感が得られたようです.
被験者は漫画を日常的に好んで読むので,オノマトペを使ったコンテンツを楽しんでいました.
検討会では,
「コンテンツの表現がやわらかくてよい」
「ベッドサイドだけでなくプレイルームで使っても面白い」
「リハビリの初期段階でも使えるのでは」
という意見をいただきました.
今後の展開
このツールをインターネット上に公開することでより多くの病院で使われることを期待すると共にオープンソースとして発展し続けるツールにしたいと考えています.
ご静聴ありがとうございました.
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