:: 2009/07/16  12:30 ::

「中心静脈カテーテルデジタルプレパレーションツールの開発」

静岡県立子ども病院では,ツールとして主に人形や紙芝居(以下アナログツール)と実写DVDを用いて中心静脈カテーテル(以下CVC)のプレパレーションを行っているが,アナログツールは数に限りがある,老朽化が目立つ,遊びの要素が乏しい,実際の様子をイメージしにくいといった問題点がある.
また,実際の様子をイメージできるように,家族指導用のDVDを補助的に使用しているが,実写場面がこどもに恐怖感を与えることがあるなどの問題点があった.
そこで現代のこどもに親しみやすいデジタルツールとして,CVC用プレパレーションツール“Kizuna”を開発した.

今回のデザインの企画,開発までの経緯,デザインの特徴を報告する.

日本造血細胞移植学会,口演,[2009年2月7日,札幌教育文化会館 第3会場 大ホール 1F]

「中心静脈カテーテルデジタルプレパレーションツールの開発」

静岡県立こども病院 内科系幼児学童病棟 加藤由香
静岡県立こども病院 血液腫瘍科 野村明孝・坂口公祥・阿部泰子・ 高嶋能文・堀越泰雄・三間屋純一
拓殖大学大学院 山中洋雄
拓殖大学工学部 岡崎 章


画面内をクリックするとスライドが移動します.ページに飛びたい場合は下3つ並びの真ん中のアイコンで操作して下さい.

CVカテーテル用のプレパレーション・ツールの開発です.
それではまず,プレパレーションとCVカテーテルについて簡単に説明いたします.

当院では中心静脈カテーテル(以下CVC)のプレパレーションを行う際,主に人形や紙芝居といったアナログなツールと,家族向けの在宅管理指導用実写DVDを補助的に用いています.アナログツールには数に限りがある,老朽化が目立つ,遊びの要素が乏しい,実際の様子をイメージしにくいといった問題点があり,実写DVDには,実写場面がこどもに恐怖感を与えることがあるなどの問題点があります.そこでこの問題点を解決し,現代のこどもに親しみやすいツールとして,(くりっく)CVC用デジタルプレパレーションツールを開発したので報告します.

開発までの経緯です.まずはデジタルプレパレーションツールにはどんな実装要素が必要なのか検討する必要がありました.そこで,当院血液腫瘍科で2006年に実施した,CVCに関するアンケート調査結果を活用しました.アンケート調査はCVCを挿入中もしくは過去にCVCを挿入していた患児もしくはその家族36名に対して行われました.回答を得た22例のうち,本ツールが使用可能と考える対象年齢として,3歳以上の患児16例を対象としました.

アンケート結果を示します.CVCプレパレーションは全員が受けたと答えました.16名中12名が説明は理解できたと答えました.説明でわかったこととして,末梢ラインの差し替え,採血などの頻回な穿刺が必要なくなる,CVCの必要性,血管外漏出のリスクなどがありました.わからなかったこととして,聞いてもわからなかった,実際に挿入している人に見せてもらって初めて説明の意味がわかったといった回答がありました.CVCを挿入する前の気持ちでは痛みや手術に対する不安,挿入場所に対する不安などの回答がありました.

実際にCVCを挿入してからの体験や思いに関する回答を示します.身体影響関連では,カテーテルによる不快感,違和感やトラブルに対する不安,かゆみや痛みに関する回答がありました.日常生活に関しては,入浴や学校生活に関与する回答がありました

以上の結果から,CVCデジタルプレパレーションの実装要素として次の3つを検討しました.デザイン,画面操作に関することとして(くりっく),遊びの要素,実写場面で恐怖心を与えず,かつイメージしやすいビジュアル,動きを取り入れたアニメーション要素,単純な操作,色彩や音響の工夫などが必要と考えました.意思決定支援に関することとして(くりっく),メリット・デメリットをきちんと説明し,こどものアドボカシーを考慮したインフォームド・アセント(以下I.A)を得られるコンテンツが必要と考えました.アンケートを基に(くりっく),CVC挿入後に起こる日常生活での問題点を解決できるコンテンツが必要と考えました.これを基に(くりっく)デジタルプレパレーション「きずな」を開発しました.開発には,拓殖大学工学部工業デザイン学科感性デザイン研究室岡崎章先生にご協力いただき,AdobeFlashによるアニメーションを利用して作成しました.

Kizuna

デジタルプレパレーションツール名”Kizuna”を操作して説明します.
(説明は以下のとおり)

項目

  • CVCとは?
  • CVCのメリット・デメリット
  • へパリンフラッシュ・消毒
  • 手術
  • 日常生活 ~睡眠編~
  • 日常生活 ~入浴編~
  • 特徴
    • アニメーション動作をもった指南役のキャラクターが,患児を誘導
    • 単純な操作機能を搭載
    • 画面における「コマ割」「吹き出し」「重要な部分は線画からカラーへと変化する絵」など,スムーズな視線移動の手法を採用
    • こどもが好む色彩・音響の工夫
    • 飽きさせないよう,ゲームなどの付加価値を搭載
    • 実写場面で子供が恐怖心を抱かないようにすることと,よりリアルにイメージしやすいビジュアルにすることの,相反する要素が必要
        →ビジュアルをイラストから実写に段階的に変化させる機能で,こどもは自分が知りたい欲求に合わせて選択が可能
    • 処置や手術などの場面で,指南役が意思確認をする機能を搭載
        →こどもの意思決定が尊重・支援される
    • 術後の痛み・不快感,日常生活の困った事例などを指南役が説明
        →術後,挿入後に起こる問題点,日常生活に関しても,学習が可能

まとめ

まとめです.「きずな」は現行のアナログプレパレーションツールの問題点を克服できると考えます.またCD複製やダウンロードが可能であるため,自宅に端末があれば家族と一緒に「きずな」でCVCの事前学習ができ,業務の簡素化にもつながると考えています.

「きずな」の特徴的なメリットはスライドに示す3つであると考えます.段階的に変化するイラストはこどもが一番イメージしやすいビジュアル画面を選択できます.
「きずな」に意思決定支援を搭載したことで,アドボカシーを考慮したI.Aを得ることができます.小児科領域の場合,こどもの意思決定が後追いになることが多く,多くのプレパレーションは,その処置を受け入れるための心理的準備として行われてきました.しかし「きずな」は,アドボカシーを大切にする姿勢を持っています.
「きずな」は時間軸を持っているため, CVCを挿入してからの様々な場面でのプレパレーション機能も有しています.この機能により「きずな」が幅広く活用できることが期待されます.

しかし,デメリットもいくつかあげられます.操作には「ボタンを押す」「ひらがなを読む」といったレベルの成長発達が必要で,端末のない環境では使用することができません.また長い時間の経過の中で, 「きずな」のコンテンツが臨床に合わなくなる可能性があります.

今後は,アナログツールと「きずな」 を併用して導入していくことが必要であると考えます.
さらに当院以外の小児医療施設で「きずな」が活用できるよう働きかけていきたいと考えています.

なお,本研究は,平成20年度科学研究費補助金基盤研究(B)「恐怖感・不安感に対してカスタマイズ可能なインフォームドアセント用ツールの開発」の研究の一部です.
参考文献はスライドをご参照ください.

ご清聴ありがとうございました.

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